
Identification with the Aggressor

どうして、彼女は怖いのか。
塾帰りの夜道を歩いていた時のこと。
ベージュ色のマンションの5階にある部屋の窓から私を見つめている男がいた。
瞬きひとつしないで目を見開いて、じっと私を見つめてくる。
なぜかそれが人じゃないとわかってしまった。
逃げても、叫んでも、これはどうにもならないと感じた私は、目を見開いて彼を見つめ返した。
私も同じものになるしかないと思ったから。
彼はぐにゃっと口を歪め、嬉しそうに私に向かって動き出す。
窓を開け、身を乗り出してくる。
どんな動作の最中でも、その顔はずっと私を見ている。
私も彼から目を逸らさずに、できる限り彼と同じように、歪に笑いながら彼のいるマンションへ歩み寄る。
窓から飛び降りてきた彼は、アスファルトの道に鈍い音を響かせ死んでしまった。
とってもあっけないのだけれど、ずっと恐怖が消えない。
だから私は彼と同じように、窓から誰かを覗いている。
制作裏話
タイトルは「攻撃者への同一化」という意味で、自分に対して危害を加えてくる相手と同じ特性や状態、振る舞いを行うことで、自分の身を守るという意味の心理学用語をそのまま使いました。
「こいつだけは絶対にやばい」とか「ああ、これダメなやつだ」みたいな直感を感じ取ることってたまにありますよね。
短い人生経験ですが、こういう直感が外れたことって基本的に無くて、「まぁでも大丈夫かな」とか思いながらその対象に向かうと、直感通り悪いことが起きるんですよね。
あまりにもこの危険センサーみたいなのが働く対象には、絶対に近づかないことにしています。
それが人であろうが、空間であろうが、なんであろうが。
少し話が逸れましたが、この作品の主人公である少女も、それと出会ってしまったとき、瞬間的にこれに似た直感が働いたのでしょうね。
自分の中だけでは処理・消化しきれない恐怖とトラウマと付き合う方法が、同一化しかなかったのかなと思います。
少女が出会ってしまったそいつも、きっと同じだった。だとすると、少女がこの後どうなってしまうのかは、容易に想像がつきます。
デザインは、抱えきれず訴えるような恐怖を感じる表情や体勢にしつつ、人にしてはかなり歪な存在だと認識できるよう、描いてみました。
ベランダの柵に通している腕は「やろうと思えばできそうだけど絶対痛い」であろう少し無理な体勢にしてみています。
痛みを感じないほどの極度の緊張状態であることを表現しています。
言われてみれば・・・という要素としてお楽しみください。
暗い住宅街を歩いているときや、夜道にポツポツと灯っているアパートやマンションの明かりを見るとき、この少女に出会ってしまわないよう、ご注意ください。
想像か現実かはよく分かりませんし、はっきり認識したくないので心底どっちでも良いですが、これは割と制作者の原体験として近い物語だったりします。
#舞台設定
90年代から2000年代始めにかけて
#キャラクター設定
恐怖心に対抗しようとした結果、恐怖を模倣する14歳ぐらいの女性
#アクション
窓からこちらを歪に見つめている。
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