
Sacrifice

生きることとは、祈ること。
昔々の話。
神様は、人間との間にできた娘に寿命があることを知り、ひどく悲しんだ。そして娘に不死の祈りをかけた。尊い娘の代わりに他の人間に死を肩代わりさせるものだった。
神様に愛された彼女は、信仰深い村に預けられた。
献身的な村人たちは、神の子供であると知らずとも彼女を大切に育てた。
「人間の生とは肉体ではなく、信仰にとどまる」ということを教えられた純粋な彼女は、それを受け入れ、毎朝祈りを欠かすことはなかった。
ただし、平穏は続かない。
他の人間が年老いていくなか、彼女だけは若い少女のままでいる。
そして村の平均寿命がどんどんと早まっていく。段々と異形としての目を向けられ、忌み嫌われるようになったとき、彼女のこめかみに鉄砲が打ち込まれた。
確かに、こめかみを貫いたはずなのに、彼女はなんともない。
近くに銃を構えたままの男の死体が横たわっている。
彼女の性質が明らかになってしまったときに、彼女は兵器として使われた。他の村に投げ込まれ、何度も死を与えられる。そして彼女を殺すものがいなくなっては、また次の村に投げ込まれる。
神様は、彼女に目を向けることができないでいた。自分のせいで、この世の中のなによりも悲惨な地獄を与えてしまったから。そして神様は、彼女を救うことにした。どれだけの悪意に苛まれ、悲惨な出来事に陥れられても、毎朝必ず祈りを捧げる彼女に向き合うことにした。
数多の死を経験し、とっくに信仰など無意味であるとわかっているのにも関わらず、彼女が祈り続ける理由。
それは彼女の「生きること」そのものになっていることに神様は気づいた。
神様は直接彼女に告げる。
「これから何があっても祈りをやめてはいけない。」と。
そして神様は、蛇に彼女を食べさせた。
手始めに足を食べさせた。
深い信仰が残っているのか、それとも痛みに慣れすぎてしまったのか彼女は微動だにしない。
次に腹を食べさせた。
頭と心臓を食べても彼女の代わりに死ぬものはない。
祈り続ける限り、彼女は死なない。
その祈る手だけは食べさせることができなかった。
制作裏話
神様も人間も、自我がある限りエゴがあり、その被害を受けてしまう対象が生まれてしまいます。
「あなたのため」というのは、大概自分のためだったりしますね。
この物語は、自分の死の代わりに、誰かが死ぬという不老不死の呪いをかけられた少女のお話です。
望まぬ運命を勝手に背負わされ、凄惨な人生を送ることになってしまった彼女が自分を保つ方法は、生まれてからずっと信じてきた祈りをやめないことでした。
もはやそれしか、世界を信じられる手段が他に無かったのでしょう。腕だけになっても生き続けることは、果たして彼女にとって幸せなのか。
神様は最後まで彼女にエゴを押し付けてしまいます。
信仰の正体は残酷かもしれません。
今もどこかでそんな運命を背負わされ続けている彼女への慰めとして、満点の青空と、どこまでも広がる花畑の綺麗な景色の中に彼女を置くことで、少しでも救われるのではと思って、この絵を作りました。
これも彼女に対する、私のエゴですね。
#舞台設定
絵本の挿絵くらいに御伽噺の中。森の中のひらけた空間と花畑。
#キャラクター設定
自分が死ぬ代わりに誰かが死んでしまう能力を持った少女
#アクション
腕だけになっても祈り続ける少女